孤独な理学療法士の日記

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理学療法士が教えるヘッドフォワードポスチャーの原因と対処法

理学療法士という職業柄、私は目の前を通る人の姿勢を分析する癖があります。最近は老若男女に関わらずヘッドフォワードポスチャーという姿勢になっている人をよく見かけます。もはや現代人の特徴的な姿勢の一つと言っていいかもしれません。

Stoop

ヘッドフォワードポスチャー(Head Forward Posture)

頭部前方突出姿勢という意味です。あらゆる姿勢において、頭が首や体幹に対して前に突き出していることを指します。円背姿勢(猫背、亀背)とも言われ、仕事でデスクワークをしている人や立ち仕事でも同じ姿勢を長時間している人に多く見受けられます。

ヘッドフォワードポスチャーとは正式な診断名ではなく、あくまでも姿勢の状態を表現したものであり、病院などでは「ストレートネック」と言われることが多いです。

ストレートネックとは?

背骨における首の部分を頸椎と呼びます。通常、頸椎は生理的に前弯(前にカーブ)していますが、ストレートネックの場合は頸椎の前弯が失われて直線的な状態となっています。そのためこのような表現方法が用いられています。

注意点

ヘッドフォワードポスチャーは正確にはストレートネックと呼ばれるように頸椎が真っ直ぐになっている訳ではありません。厳密に言うと上部の頸椎は前へカーブし、下部の頸椎は後ろへカーブしています。

ほんの数cm頭が前に出ると?

人間の部位で重さの比重が最も高いのは頭部です。頭部は体重の約10%(ボーリングのボール位)の割合を占めます。正常の位置から頭が数cm前方に出ることで肩・首周囲の筋肉への負担が増加します。

デスクワーク中心の仕事をしている人は頭部が平均5~6cm、その中でもパソコン業務がメインであれば6~9cmも前へ出ていることも珍しくありません。

Desk work

例)体重70kgの人の頭が5cm前に出ると

頭の重さである7kgが5cm前に出ることで、増加した分の8kgを足すと合計で15kgの重さを細い首だけで支えなければなりません。その状態で仕事を8時間続けていると首の筋肉や靭帯にかかる負担は相当なものであると想像しやすいでしょう。

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ヘッドフォワードポスチャーが完成される過程

頭部が前方に突出することで、首の筋肉は後ろ側は短くなった状態で、前側は伸びている状態となっています。人間は同じ姿勢を20分続けると使っている筋肉の緊張状態が体に馴染んでしまいます。それらの筋肉が元の状態に戻るためには約1時間費やすとされます。つまり3倍の時間を要するということです。例えば仕事で8時間勤務を行うと筋肉が元の状態に戻るためには24時間、丸1日かかることになります。毎日フルタイムで仕事をしている人は筋肉が元の状態にリセットされる前に、また仕事を始めることになります。その積み重ねにより、いつの間にか筋肉が形状記憶がされてしまいヘッドフォワードポスチャーという姿勢が完成されます。

大人だけでなく子供に増加傾向があるのはなぜ?

この姿勢は高齢者のイメージが強いかもしれません。しかし、近年では職場の環境(パソコン業務)やスマホの普及により若い人にも多く見られます。それに加え、ゲームやタブレットを長時間操作することで子供にも非常によく見かけるようになりました。

ヘッドフォワードポスチャーによる体への弊害

頭が前に出ることで体全体が丸くなってしまいます。そうなると腹筋に力が入りやすく、胸郭がしぼんだ状態となります。結果、肺が圧迫されることで空気が入る量も減少し、呼吸が浅くなります。

また、頭部の重みを支え続けることで肩・首周囲の筋肉は緊張状態となっています。そのため頚部を通っている血管(椎骨動脈)が圧迫され、脳へ送られる酸素や血液が減少し、集中力や判断力などの低下を引き起こします。

ヘッドフォワードポスチャーな人の呼吸

顎が前に突き出ると口が開きやすくなるため呼吸は主として口で行われます。口呼吸は鼻呼吸に比べると1回で肺に取り込まれる酸素量は少なくなります。その分酸素を取り入れるために呼吸の回数が増え、かつ自律神経において交感神経が優位となり体の緊張状態が続いてしまいます。

通常、呼吸は横隔膜をメインとして行われますが、口呼吸は横隔膜よりも呼吸補助筋と呼ばれる肩・首周囲の筋肉を使用する頻度が高くなります。そのため通常より筋肉の疲労が溜まりやすいです。

その他の症状

頭痛・眼精疲労・めまい・ふらつき・意欲減退・免疫力の低下

良い姿勢となるために知るべきこと

良い姿勢とは一体どんなものでしょうか?多くの人は、良い姿勢というものを勘違いしています。良い姿勢をとることは「きつい」「つらい」「疲れる」といったイメージがあるのではないでしょうか?しかし、それは間違いです。実際良い姿勢をとることで体はすごく楽な状態となります。良い姿勢は骨で支える姿勢であり、筋肉に余計な負担をかけないことから疲労を感じにくくなります。もし、良い姿勢をとることであなたが「きつい」と感じるのであればその姿勢自体が間違っているか、もしくは体中の筋肉が悪い姿勢のまま硬まっている可能性があります。

良い姿勢の基準

頭部に関する基準は耳の後ろにある「乳様突起」と肩甲骨にある「肩峰」を結んだ線が垂直になっていることです。

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立位の場合は頭部が背骨にしっかり乗った状態で、かつ骨盤・股関節にもしっかりと体重を乗せることが良い姿勢となります。

どこでもできる簡単な改善・予防方法

良い姿勢をとることができる簡単な方法を紹介します。日々の日常生活や仕事、学校で授業を受けているときなど常に正しい姿勢を取り続けることは不可能です。そこで一度これらを実践する習慣を身に付けてはいかがでしょうか。

座位バージョン

  1. 椅子(できるだけ座面が硬い椅子)に座り、最も全身がリラックスしている状態(普段している楽な姿勢)を作ります
  2. 1の姿勢から可能な限り最大限の正しい姿勢をとります。骨盤を立たせ、お腹を前に突き出し、胸を張って、肩を後ろに引いて、顎を後ろに引いてください
  3. それが100%良い姿勢であると自分自身で認識した後に10%くらい楽な姿勢へと戻してください
  4. 3の状態を一日一回、5分間だけでいいので実践してみてください。できれば深呼吸を同時に行えばより効果的となります

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ポイント

上図のように頭が背骨・骨盤を通って垂直になる姿勢となれば筋肉に余計な負担をかけずに済み、疲労を感じにくくなります。

気軽にテレビを見ながら、もしくは本を読みながら行っていただいて構いません。

立位バージョン

立位での悪い姿勢の例

立位での悪い姿勢は骨盤が前に倒れていることが多いです。骨盤が前傾することで体は起きよう(背筋を伸ばそう、胸を張ろう)とするため反り腰になりやすく、それが段階的に頭部方向へ連動していき、頭が前方に突き出るヘッドフォワードポスチャーとなります。
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立位における良い姿勢は第一に骨盤の位置感覚を身に付けることが大切です。良い姿勢とは骨盤が直立した状態です。

  • 骨盤が直立した状態は、重心線が頭部→背骨→骨盤→股関節→踵と一直線になっています(下図左参照)
  • 骨盤が前に倒れている状態は、体の重心線は前方に位置しています(下図右参照)

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ポイント

骨盤が直立した感覚が分からない人が多いです。まずはこの感覚を身に付けることから始めましょう。

骨盤が直立している感覚を身に付ける方法

方法は簡単です。立って軽く腕を振りながらその場で足踏みをするだけです。これで最短で強制的に骨盤を直立させることができます。

ポイント

もし骨盤が立っていなければ、その場で足踏みを続けることはできません。骨盤が前に倒れた状態のままその場で足踏みを続けると、徐々に体の重心線が前方へ移動していきます。そうなるとその場で体を維持することが難しく、そのまま前方へ進んでいきます。それを我慢するため体が非常にきつく感じます。

足踏みをするだけで自然に良い姿勢に

足踏みをすることで何が起こるのでしょうか?その場で足踏みを続けるためには骨盤を直立させる必要があります。そして自然と楽な姿勢となっていき、その状態を保つことができます。

足踏みを止めるタイミング

5~10回の足踏みを行うことで骨盤が直立してきます。その感覚が掴めた時に止めます。足踏みを止めた瞬間その時こそ骨盤が直立した状態であり、それが立位での良い姿勢となります。その場で足踏みを行うだけで勝手に良い姿勢となります。

ちょっとしたコツ

骨盤が直立した感覚とは下腹部に力が入っている状態です。逆に力が抜けていると骨盤が前に倒れてしまいます。まずは足踏みをしながら下腹部に少し力を入れる意識をして少しずつ体を伸ばしてみましょう。そうすると骨盤が徐々に立ってきます。この感覚を覚えておいてください。

徐々に慣れます

普段から骨盤が前に倒れている人はその場で足踏みを行うとふんぞり返っている感覚があるかもしれません。慣れるまでは少し時間がかかるかもしれませんが、実際にこれが最短で良い姿勢となれる方法の一つです。

正しい姿勢が分からない人や日頃から理由もなく疲労感がある人は、一度その場で足踏みを行い確認してみましょう。それが良い姿勢の基本となり無意識に行えるようになれば疲労しにくい体を作ることができます。いつでも、どこでも、簡単に行うことができるので一度お試しください。

 

ヘッドフォワードポスチャーは日々意識しなければ治りません。長年この姿勢を取り続けることにより体全体に歪みが生じる原因となります。日頃から自分自身が悪い姿勢であると自覚し、治そうと意識している人はよいですが、何の自覚もないまま過ごしていくことで将来体に様々な弊害をもたらすことになります。一度自分の姿勢を他の人や自分自身で確認した方がよいでしょう。もし少しでも姿勢が悪いと感じれば、正しい姿勢となるにはどうすれば良いかを考え行動に移していきましょう。

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